まず、傾斜地の形状から誘導される、目下に広がる景色への視線を考えました。日常生活での視線は、横方向へ広がり、その先に移る景色を認識しました。この地では、美しい借景となる神戸の街と空と海に誘導されますが、その場所に限定性があるのではないかと考えました。テラスと南側に配置された部屋の窓際のみが、その視線を包括されるものだと。この街にあえて暮らすということは、日常的にもこの素晴らしい借景を自然体として享受できる暮らしを意識することで、豊かな暮らしにつなげることできるのではと考えました。この土地形状と視線に逆らうことなく斜め方向への視界の確保し、自然と一体化する形状とすることで、この空間に更なる広がりを持たせています。また、同時にこの地に暮らす人のみが味わう独自の世界観を楽しむ暮らしが実現されています。そして、自然と一体化させる形状の中にも、浮遊させた居住空間からみる景色はまたひとつ違った景色を見出し、この建築の存在を誇張させるシンボルを映しています。