古くからの高級住宅地の一角であり、南東方向に桜やイチョウ並木を楽しめる遊歩道に囲まれた、大きなため池のほとりにある好立地な計画地。本プロジェクトは個人住宅として、この土地に惚れ込んだ施主が願われた「隣接する水面を生活の中に取り込むこと」「ゲストを招き、楽しい時間を過ごせること」のほか、その行為による形態としてデザインするとこも建築する上での目的となりました。ため池の遊歩道は地元住民の散歩やランニング、お花見などの場として多くの人が行き交う場所です。プライバシーや防犯への配慮を踏まえながら最高の眺めを得るため、家族が多くの時間を過ごす居住空間を可能な限り高い位置に配し、大胆に開口部を設けることで眼下にいつも水面を感じられる、建築と景色と生活が一体となった、眺めているだけで心身が解き放たれる開放感と非日常感を堪能できる住まいを生み出しました。特に視界を遮るものがない最上階はいかにも眺望のために用意された空間であることを内外の双方から感じられるとともに、木造3階建て住宅の高さ制限の緩和を活かしてつくり出した2.5階の層によって、ため池側ファザードを浮遊しているかのように見せて、地域の新たなシンボルとしての存在感を醸し出し、時を経ても色褪せない魅力を持った邸宅を実現しました。この大胆な浮遊感ある建築を実現するにあたり、木造ラーメン構法(耐震等級2)を採用し、IoT技術を積極的に活用したNearly ZEHの住まいとすることで資産価値を高めるとともに、持続可能な木造建築の新たな可能性を示す先進的事例として啓蒙活動につなげたいと考えています。各フロアは元々敷地にあった出入口付近との1.6mの高低差とガレージへの進入路を考慮してスキップフロアを採用し、階段を上がるにつれて景色の変化を楽しめる演出を施しています。1階と3階をパブリックスペース、2階をプライベートスペースで構成しているため、ゲストは静謐な1階エントランスから直通エレベータで美しい景色が広がる3階にアクセスできるようにしました。1階は庭屋一如、2階は職住一体、3階は眺望を考え抜き、家族やゲストとのコミュニティを活性化させる空間デザインを行うことで、これからの時代に必要な住まいの価値観を体現しつつ、日常生活に癒しと満ち足りた時を与えてくれる住まいが完成しました。
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